はじめに
今回は今までに得た知識を使って音を作り、そのスペクトルを見ていきます。最終的に、VVVF(可変電圧・可変周波数)を実現するための変数の操作方法と、電車の音の主成分であるキャリア周波数$f_c$がモーターの回転速度に関係なく設定できるということを示します。
スペクトル画像の生成にはWaveToneを使いました。
なお、キャリア振幅は1で固定しています。また、音は線間電圧です。
すべての変数を固定
まず
- キャリア周波数$f_c$を1050Hzで固定
- 信号波振幅$A_s$を1で固定
- 信号波周波数$f_s$を50Hzで固定
というパターンのスペクトルを見ます。一応、音量に注意してください。
時間的な変化がない単純な音になりました。
信号波周波数$f_s$を変える
次に
- キャリア周波数$f_c$を1050Hzで固定
- 信号波振幅$A_s$を1で固定
- 信号波周波数$f_s$を0→50Hzに上げる
というパターンのスペクトルを見ます。
上でやったものよりもスペクトルがかなり変わっていますね。信号波周波数$f_s$を動かすだけでも大きく変化します。
右下に見えているカーブは信号波周波数$f_s$と同じ成分です。
信号波振幅$A_s$を変える
次に
- キャリア周波数$f_c$を1050Hzで固定
- 信号波振幅$A_s$を0→1に上げる
- 信号波周波数$f_s$を0→50Hzに上げる
というパターンのスペクトルを見ます。
初回の線間電圧のサンプル音に近づいてきましたね。インバーターは、信号波周波数$f_s$を上げるのと同時に信号波振幅$A_s$も上げています。
VVVFは可変電圧・可変周波数という意味ですが、VVVFは信号波振幅$A_s$可変と信号波周波数$f_s$可変によって実現されます。
キャリア周波数$f_c$を変える
最後にキャリア周波数$f_c$も変えていきます。
- キャリア周波数$f_c$を1050→1050→700→1800Hzにする
- 信号波周波数$f_s$を0→50Hzに上げる
- 信号波振幅$A_s$を0→1に上げる
というパターンにします。
一番よく聴こえる音が一定→下がる→上がる、という動きをしていることがわかるでしょうか。
このよく聴こえてくる音の正体はキャリア周波数$f_c$に由来していて、これは信号波周波数$f_s$に関係なく設定できます。有名なドレミファインバーターはキャリア周波数$f_c$を音階状に設定しています。有名といえば、E231系の近郊型の墜落インバーターもそうですね。わかっていた人もいると思いますが、先ほど作った音は墜落インバーターの設定を真似ています。
余談ですが、通常は信号波周波数$f_s$が上がっているときにキャリア周波数$f_c$を下げることはありません。しかし墜落インバーターではそれをしていて珍しいため「墜落」と呼ばれたということが考えられます。
初回でお伝えしたとおり、電車のモーターから聴こえてくる音は線間電圧と同じ音になります。つまり、電車のモーターから聴こえてくる音のうち主なものはキャリア周波数$f_c$由来となります1。こうしたことから、電車の速度を上げつつ(=信号波周波数$f_s$を上げつつ)モーターから聴こえてくる音を音階状にするといった芸当が可能なのです。
まとめ
- 信号波振幅$A_s$と信号波周波数$f_s$を変えることでVVVFとなる
- 一番よく聴こえてくる音はキャリア周波数$f_c$に由来する
- 一番よく聴こえてくる音(キャリア周波数$f_c$由来)は信号波周波数$f_s$に関係なく設定できるので、音階状の音をモーターから鳴らすことも可能
「キャリア周波数$f_c$」「信号波振幅$A_s$」「信号波周波数$f_s$」が多く出てきていたので、マーカーで色分けをしました。ご活用ください。
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これが言えるのは低速域だけで、実際は高速域になるとキャリア周波数$f_c$以外の音のほうが大きく聴こえるようなります。↩